ディプロマ・ポリシー
博士前期課程
(1) 育成する人材像(教育目標)
国際社会・各国政府・地域社会・市民が直面する多様な開発課題を社会科学の理論と手法を用いて学際的かつ実証的に分析し、政策立案とその実施過程に貢献できる人材(「グローバル企業人材育成特別課程」については、日本企業の海外事業展開を担うことを通じ、国際協力に貢献する人材)を養成します。
- 所定の単位を修得し、国際開発協力に関わる基礎的な知識と、特定の研究課題に関する一定の専門的知識を身につけている。
- 国際的な議論の枠組をおさえて実証的なデータを提示し、国内外の他者に対してわかりやすく説明することができる。
- 将来、グローバルまたはローカルな社会の課題に対し、解決のための方策を考える資質を修得している。
(2) 卒業、修了判定時に課している基準(必要要件)
博士前期課程に原則として2年(「グローバル企業人材育成特別課程」は1年)以上在学し、研究科が指定する履修方法に従って30単位以上を修得し、かつ、必要な研究指導を受けた上、修士論文の審査及び試験に合格することです。
(3) 修士学位論文の審査基準
修士学位論文は、国際開発学領域の専門知識、先行研究の整理度合、問題設定と結論の論理的整合性、結論を導き出す根拠資料の提示、オリジナリティの度合、概念の表現と定義の正確性、学術論文スタイルの踏襲等を基準として審査されます。また、学位口述試験を実施して、学生が修士学位論文の内容についての質問に論理的に回答し、その内容を説得力をもって説明できるかどうかを審査します。審査の結果は研究科教授会に報告され、教授会の議を経て合否が決定されます。
博士後期課程
(1) 育成する人材像(教育目標)
国際社会・各国政府・地域社会・市民が直面する多様な開発課題を社会科学の理論と手法を用いて学際的かつ実証的に分析し、政策立案とその実施過程に貢献できる人材を養成します。
- 所定の単位を修得し、国際開発協力全般に関わる基礎的な知識を発展させた幅広い知識と、特定の研究課題に関する高度に専門的な研究能力を身につけている。
- 実証性と独自性を備えた研究成果を体系化された国際的な議論の枠組に位置づけて提示し、国際的な場で発信することができる。
- 将来、国家及び国際機関における中枢的専門職人材として、国際社会や当該国家の政策に革新的な影響を及ぼすことが期待できる。
(2) 卒業、修了判定時に課している基準(必要要件)
博士後期課程に原則として3年以上在学し、研究科が指定する履修方法に従って6単位以上を修得し、かつ、必要な研究指導を受けた上、博士論文の審査及び試験に合格することです。
(3) 博士学位論文の審査基準
博士学位論文は、国際開発学領域の専門知識、先行研究の整理度合、問題設定と結論の論理的整合性と専門性、結論を導き出す根拠資料の収集と実証性、オリジナリティ、概念の表現と定義の正確性、学術論文スタイルの踏襲、研究対象・結果の現実的妥当性、有用性及び政策含意等を基準として審査されます。論文審査で可と判定された者に対し、公開で最終口述試験を実施し、博士論文の内容を中心に、国際開発学領域全般に関わる幅広い内容について質疑応答を行います。本審査の結果は研究科教授会に報告され、研究科教授会は報告内容を審議の上、学位審査の合否を決定します。
教育プログラム
専攻名 | 教育プログラム | |
---|---|---|
国際開発協力専攻 | 経済開発政策・マネジメント | グローバルリーダー・キャリアコース * 入学後、5つのプログラム(特別課程を除く)から履修生を選抜します。 |
平和とガバナンス | ||
包摂的な社会と国家 | ||
教育と人材開発 | ||
貧困と社会政策 |
「経済開発政策・マネジメント」プログラム
Program in Economic Development Policy and Management
「経済開発政策・マネジメント」プログラムは、社会経済開発(Socio-Economic Development)の重要部分を有機的に構成する経済開発に焦点を当て、雇用確保・所得増大など経済成長を通じ貧困削減に資する経済開発の専門家、開発エコノミスト(Development Economist)を育成する。多様化する21世紀の開発課題を踏まえ、経済開発を広く社会経済開発の一部として捉えて、開発への種々の参加主体、社会経済制度(インスティテューション)、文化等を整合的に考慮しうる New Political Economy に造詣の深いバランスのとれた開発エコノミスト育成を目指す。 特に、グローバリゼーション下の経済開発戦略、産業振興・産業政策(含中小企業振興)、経済成長・格差・貧困削減の三角形、農村開発・農業振興、開発金融、観光開発、経済開発と環境の7つの重点対象領域について「持続的な開発」を指向する「経済開発政策」と「開発マネジメント」を中心に取り扱う。これにより、問題把握、政策立案、政策施行・調整を包括的にマネジメント出来る開発エコノミスト育成を目指す。また本プログラムの特徴として、計量・実証分析、政策シミュレーションなど数量分析能力、フィールドワーク等を通し開発現場に即した分析能力の付与、我が国やアジア地域の政策事例のケース修得を重要視する。経済開発プログラムは、これまで多くの途上国国家開発中枢人材(アジア諸国を中心に)、国際機関エコノミスト、我が国の国際協力機関職員、大学等の関連分野研究者、多国籍企業の海外事業担当者等を輩出してきた実績を有する。今般、国際社会の新しい開発アジェンダである「持続可能な開発目標(SDGs)」および我が国の新「開発協力大綱」の設定を受けて、国際開発協力コミュニティのニーズおよび国際協力への取り組み方は変化しつつある。途上国政府の政策実務者、それを支える現地ブレインから構成される現地政策サークルに参画し、現地研究者、施政者との協働で知的貢献を行う、所謂「政策支援型研究」協力が求められることとなり、今後、現地の国家中枢人材育成もこのような継続的な関わりの中で行っていかねばならない。また、我が国の新「開発協力大綱」で求められているように、日本の国際開発協力はソフトパワー強化の時代に入っており、産官学の連携による途上国経済開発と、我が国産業の活性化が求められ、それに果たす大学人の触媒的役割も大きいとされている。
途上国でもEvidence-based Policy-makingが求められる中、政策立案・実施を実証研究、多国間ケース比較分析、フィールドワーク、および関連研究者・実務者の知的ネットワーク構築による Knowledge Sharingの提供により支えていく。そのような人材を呼び込み、育成して輩出していくことが、今後の経済開発プログラムの主たる活動目的となる。アジア諸国を中心にアフリカ等他地域にも拡大されている経済開発の知のネットワークを、途上諸国を含む国際開発協力コミュニティ、我が国、および名古屋大学に Global Public Goods (地球公共財)として構築し、ネットワークそのものと、そこから生まれるネットワーク型経済開発政策研究の成果を残していくところに、アジア・アフリカの各地で高い評価を受けてきた、これまでの実績に根ざした当経済開発プログラムの今後の存在意義がある。
「平和とガバナンス」プログラム
Program in Peace and Governance
「平和とガバナンス」プログラムでは、持続可能な開発の実現に向けてあらゆる形態の暴力を削減し、人権・民主主義を確立するために、紛争と平和およびグローバルな統治(governance)に関わる理論と実践面を強化し、平和構築、安全保障に携わる専門家のみならず紛争後の国家における公正な社会構築に係わる人材の養成・再教育を行う。平和と公正をすべての人々に実現することは、SDGsの目標16に含まれる。今日の世界では国家間の紛争、内戦、組織的暴力、テロ、女性に対する暴力などが絶えず生じている。さらに貧困、抑圧、マイノリティに対する差別、性的マイノリティに対する人権侵害など、目に見える明らかな暴力ではなくても、人々に潜在的に降りかかる構造的な暴力と私たちは隣り合わせで暮らしている。こうした構造的暴力は、それ自体が問題であるとともに、直接的な暴力へと発展する可能性も秘めている。本プログラムでは、消極的平和から積極的平和を実現するための世界レベルのガバナンス構築を課題としながら、あらゆる形態の暴力を削減し、政府やコミュニティと協力し平和と安定の実現に資する人材を育成する。
ミレニアム開発目標(MDGs)の達成が最も遅れていたのは、紛争や組織的暴力の影響を受ける国および地域である。内戦のコストは、経済的後進国にとって、約30年分のGSP成長に相当し、不安定な状況が長期化している国や地域では、貧困の克服に大幅な遅れを見せている。SDGsでは、MDGsの達成から遅れた国や地域を取り残さずに達成できるかどうかが一つの重要な課題となっている。あらゆる形態の暴力に対応し、物理的暴力を未然に防いで持続的に平和と安定を維持できる正当で安定した制度の構築と、雇用を創出する民間部門の育成、国民の安全と正義を守ることができる国家と社会の再建が行えるかどうかは、SDGsの達成を左右するといっても過言ではない。平和・人権・民主主義の三位一体となった国家構築がのぞまれている。
グローバル化が進展した現代世界の暴力に対応するには、多層的なアプローチが必要である。今日の世界では、組織的暴力や紛争も繰り返し生じていることを考慮すると、紛争後の復興と再建だけではなく、暴力や紛争の防止と管理を可能にするような地域的協力が必要とされている。また違法な不正取引の阻止、食糧および資源価格の乱効果や金融の不安定さなど、各国に与える影響が大きい問題には、世界レベルでの措置が必要になる。地域的な協力とグローバルな協力の重層的協力関係を生み出していかねばならない。それは国家間協力にとどまらず、国家、国際組織、NGO、企業、個人のレベルでの協力を包含するものである。その一方で、国際社会には世界政府(government)は存在せず、強制に基づく秩序体制は期待できない。あらゆる形態の暴力から人々を守るためには、主権国家からなる国際社会に対するガバナンスを構築していかねばならない。ミクロおよびマクロな視点からの諸策が必要である。つまり積極的平和も、国家、国際および人間の、それぞれの視点から捉え、それらがどう影響しあっているのかを考える必要がある。
企業活動に関していえば、国際経済活動を規律するグローバル・ガバナンスの要となることが期待されていたWTOの試みは、いわゆるドーハラウンド交渉の停滞と地域主義の台頭によって危機に瀕している。また、現在、外国直接投資は最も重要な開発の推進力であり、「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」も、新アジェンダの実施における民間部門の役割を強調する反面、多国籍企業の事業活動に起因又は関連する環境損害、人権侵害、腐敗行為等の問題の報告も後を絶たない。これらは、企業による貿易投資活動を国際的に規律す るためのガバナンス構築に向けた検討の必要性を裏付ける。
暴力が生じる背景には、政治的、法的、社会的、歴史的、文化的、経済的要素が複合的に存在していることに鑑み、本プログラムでは、法学、政治学、社会学、人類学、歴史学、経済学等を架橋して学際的なアプローチで問題を分析し、解明していく。物理的暴力だけでなく構造的暴力を含めて、暴力と紛争に強い社会をつくり、それらの勃発と連鎖を食い止める施策を、国際社会、国家、人間一人ひとりの観点から考えていくことが本プログラムの目的である。本プログラムでは、紛争の予防・管理・解決、平和構築、安全保障の実践に携わる国際機関、政府機関、NGO、開発・危機管理コンサルタント等の実務家を志向する学生に学びの場を、また既に社会で活躍している人に再教育の場を提供し、グローバル化時代の国際関係を読み解く洞察力と分析力を身につけて、平和に貢献できる専門家を養成する。
「包摂的な社会と国家」プログラム
Program in Inclusive Society and State
「包摂的な社会と国家」プログラムでは、多様化する21世紀の開発課題を踏まえ、国家や市民社会の役割を多元的な視点から理解できる専門家の養成を目指す。「包摂的(inclusive)」という言葉は、「持続可能な開発目標」でも重視されており、開発や成長が格差や偏りをともなうことなく、すべての人々にとって公正で開かれたものでなければならないという価値観を示している。具体的には、女性や貧困層、マイノリティ集団、特定の地域等が排除されたり周辺化されたりする現状を分析し、いかに望ましい方向へ変革していくかという課題として設定できる。
経済的福祉を増やすだけでなく、それがより公正に行われなければならないこと、とりわけ排除されがちな人々が意見を述べたり、重要な決定に参加できたりする機会が必要であることは、国際社会や先進国・途上国で広く認められるようになってきている。しかし、いかにして包摂的な国家と社会が実現するかについては、明確で普遍的な答えが存在するわけではない。実際には、現実課題についての学際的な広い視野と、様々な人々の立場に立った多元的な視点が必要になる。
また、包摂的な国家や社会に向けた課題を分析するには、人びとがどのように国家や社会秩序を作っているのかを解明することが必要である。国家制度や社会秩序を形づける代表的な仕組みが「法」あるいは「法律」といわれる制度だ。冷戦の終焉以降、国際協力において「法の支配」が強く求められるようになり、「持続可能な開発目標」にも「法の支配」の確立が含まれた。これは、法の公平性、公正性、基本的人権の保護といった機能が、人々の包摂性の実現に貢献するという前提に基づいている。実際、人類は近代市民革命以降、法にそのような機能を求め、かなりの程度、目標を達成してきました。しかし、さまざまな社会において、法が期待通りに機能するわけではない。特に開発途上国・非西洋諸国では、法の機能に必要な前提が不足または異なっていることもある。例えば、法律が読める言葉で書かれていない、裁判所が遠すぎる、裁判官や警察など法を守らせる公務員に給与が払えない、国の作った法律と自分たちが慣れ親しんでいる社会のルールが違いすぎるなどである。そのため、その社会に合わせた法制度を考えることが必要になる。つまり、法制度改革は人々の包摂性を促進することもあれば、一部の既得権益のみ重視して阻害することもある。また、人びと の宗教や文化に基づく社会関係や慣習、市民社会におけるNGO活動、様々な日常的な実践の積み重ねも、社会秩序の構築に大きな役割を果たしている。社会秩序は、国家と多様な社会勢力の間で争われ作られているのである。そして、その動態を、法学・政治学・社会学・文化人類学・歴史学などを架橋した学際的アプローチによって分析し、どのように公正で開かれた包摂的な国家と社会を実現できるのかを考えることが本プログラムの目的である。
本プログラムでは、開発の実践に携わる国際機関・NGO・官僚・開発コンサルタント等の実務家を志向する学生に、学びと鍛練の場を提供し、洞察力・応用力・包容力に富んだ多様な専門家に育成する。
「教育と人材開発」プログラム
Program in Education and Human Resource Development
「教育と人材開発」プログラムは、発展途上国を中心に、教育や人材開発を推進するための政策、戦略、教育の実践上の課題や取り組みを分析し、教育や産業人材育成に関する政策立案、プロジェクトやプログラムの企画・実施や評価に従事することができる専門家の養成をめざす。本プログラムは、当該分野で、日本における大学院レベルの研究・教育プログラムとして最初に発足した教育開発講座(1991年より)を土台としており、これまでの伝統をもとに、今日的な課題を踏まえつつ、途上国と日本の国際開発業界において教育・人材開発研究に携わる研究者や政策担当者・国際協力専門家など教育開発の専門家として活躍する人材を育成する。
2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)では、「ミレニアム開発目標(MDGs)」で掲げられた教育に関する目標をさらに発展させ、目標4として「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことを掲げている。1990年に開催された「万人のための教育世界会議」(於ジョムティアン)以降、基礎教育を重視する国際的思潮、各国の教育政策と国際協力の展開を反映し、発展途上国の基礎教育は1990年代以降、着実に拡大した。しかし、ほとんどの国で初等教育純就学率は90%を超えたものの、途上国を中心に、世界では、未だ数千万人の就学年齢の子どもが不就学の状態にある。多くは、最貧層、マイノリティ、紛争地域の子どもである。さらに、すべての教育段階において、ジェンダー平等は達成されておらず、女子教育の推進は、先進国・途上国を問わず、引き続き喫緊の課題である。
こうした教育における不平等を解消するには、教育政策・制度だけでなく、家計や行政による資源の配分、社会や政治の構造、地域やコミュニティの価値観や慣習まで射程に含めた方策が必要である。それゆえ、教育開発の専門家は、こうした幅広い対象分野に対する理解力を持ちながら,教育・人材開発に関わる課題を分析し、解決策を提示できる能力が求められており、本プログラムはこうした専門知識と能力を備えた専門家を育成する。
就学率向上の目標が大幅に改善されたなか、SDG4では、教育の質の向上に今まで以上に重点が置かれるようになった。教育の質は依然として多くの国が抱える課題であるが、生徒・児童の学習成果の向上を教育の質改善の中心に置き、そのための方策として、カリキュラムの改善、教員養成の改善、さらに、学校の運営・ガバナンスの改善など、幅広い分野での取組が考えられる。
他方、グローバル化の進展により、途上国には、外国企業の進出が加速化しており、さら に地場産業もグローバル競争に参入する機会が増大し、産業基盤の構築と産業発展を進めるために、産業人材育成の重要性が増してきた。産業開発を支える良質の労働力を確保するには、中等教育・高等教育の拡大と質の向上が重要であり、職業教育・訓練の充実が欠かせない。
とりわけ、先進国・途上国ともに、知識基盤経済化が進展する中、イノベーションの重要性が増しており、イノベーションを担う高度な専門知識を有する高等教育人材の育成のニーズも高まっている。他方、途上国では依然としてインフォーマル・セクターが労働市場において拡大しており、インフォーマル・セクター労働者の技能向上は、産業発展にとって重要であるだけでなく、貧困削減の重要な手段でもある。さらに、労働市場におけるスキル・ミスマッチを解消するには、教育と仕事との接合性を向上させる必要がある。
本プログラムは、社会・経済の構造や地域社会のへの理解を深めつつ、こうした教育開発に関わる諸課題の解決のための政策立案、評価、プログラムやプロジェクトの実施に関わる上で必要な知識とスキルを学ぶことを目的としている。
「貧困と社会政策」プログラム
Program in Poverty and Social Policy
「貧困と社会政策」プログラムは、MDGs とSDGs両者に共通する国際開発の最大の課題である貧困を実証的かつ政策的視点で分析する能力を身に着けた国際開発の専門家養成を目指す。国際開発の専門家が扱う貧困問題は、従来より、開発途上国の農村を対象とするものが多かった。近年では、貧困は途上国の都市や先進国でも問題となっており、絶対的貧困とともに相対的貧困の分析もSDGs達成にとって重要である。本教育プログラムは、貧困問題の実態を把握し、貧困を削減するための政策対応を国際的な議論の枠組に位置づけて幅広く学ぶことを目的とする。
「貧困」は現実社会に存在する開発の課題で、経済学の知識だけでは理解できず、また解決もできない。「貧困」は社会的な排除と密接にかかわる社会的な現象であると同時に、権力構造という政治的な枠組みの中でとらえるべき現象でもある。また、貧困を解消するための諸政策は、様々な国や地域で、歴史的に多くの試行錯誤を繰り返して形成されてきた。既存の学問的枠組みにとらわれず、分野を横断する学際的な視点と、国際開発の基礎概念および貧困をめぐる歴史的な政策論議の枠組を理解する力が求められる。また、その解決策についてはローカルな視点とグローバルな視点の両方が求められる。
本プログラムは貧困問題に関する国際社会の議論の流れを読み解くために必要な基礎概念、理論、手法とアプローチを教え、社会政策を通じた貧困問題の解消について学ばせる。さらに、貧困の対極にある「よい生活」とは何であるのかを、国際開発の規範を問い直すことを通じて模索し、経済開発に収斂されない社会的価値の創造につながる新しい開発のあり方を考える独創的な発想力を養う。
対象とするのは、各国において「持続可能な開発目標」達成に向けた社会政策を担っていく意欲のある若手官僚や、将来、国際機関、各国国際協力機関、NGO、民間企業等で専門職につき、貧困層に裨益する公正な社会を実現したいと考えている新卒もしくは社会経験のあるものとする。